HOME > 島の匠たち 〜 山本幸法/島醸 〜

ベリッシモ・フランチェスコが、「島醸 工場長」山本幸法氏に出会った。

 
  島醸 工場長
しょうゆもの知り博士
山本 幸法
株式会社島醸
住所 小豆郡小豆島町西村甲250-2
TEL 0879-82-3737
FAX 0879-82-3739
   
工場内は蒸した大豆の匂いでいっぱい。大豆を蒸す圧力釜、蒸し大豆と炒り麦を結ぶラインなど、設備のほとんどが自動化され、管理されている。工場内では「醤油麹」を造り、塩水を混ぜて発酵させて「もろみ」にし、それを搾る工程までが行われる。
  ここは「麹」を造る「製麹室」。蒸した大豆と炒って粉砕した小麦と麹菌を混ぜ合わせて「醤油麹」を造る。製麹室の中で40時間以上かけて麹が造られ、この麹の善し悪しが、醤油の出来に大きく影響を与える。   一般に出回る事のない「生揚げ醤油」を味わってみた。うぇ〜っ。塩からい。「残念ながら生揚げは、一般の醤油とは味がちがうんですよ」と、ニヤッとする山本さん。先に言ってよ〜!
 

醤油の味を決める“生揚げ”を造る自負

 
オリーブオイルやそうめんと並ぶ小豆島の特産品、醤油。その起源は江戸時代に遡り、明治から昭和初期の最盛期には400軒の醤油醸造所があった。今では20軒ほどが島醤油を造り続けている。「島醸」は昭和47年に設立された醸造所。「といっても、うちで造っているのは醤油ではなく、“醤油の元になる醤油”です」と島醸工場長の山本幸法さん。ん?醤油の元の醤油ってなんだ?
  敷地内には背の高いタンクが何本も並ぶ。工場内はオートメーションで稼働する設備の数々がずらり。「ここは“共同醸造所”」と山本さん。戦後、醤油造りの機械化が進んだが、小規模な醸造所では対応できず、数社が資金を出し合い、近代的な設備を備えた工場を建てた。それが島醸。「ここで造るのはもろみを搾った“生揚げ醤油”まで。生揚げは醤油の元になる醤油です」。
  なるほど生揚げはいわば醤油の原液のようなものか。島醸では現在、6社に提供する生揚げ醤油を醸造。各社では生揚げ醤油に独自の調味をして仕上げたり、ポン酢などの加工品を造る。「醤油の味を決めるのが生揚げ。各社の“核”となる味を造っている責任を感じながら、皆、取り組んでいます」。仕事に愛がある人はかっこいい。若い社員が額に汗して頑張る姿にも感動した。
高さ12mのタンクが何本も立ち並ぶ敷地内。タンクの中には、工場で造った「麹」に「塩水」を加えたものが入っている。タンク内で発酵が始まり、熟成させると「もろみ」になっていく
 
木桶蔵には背の高いボクでも見上げるような木桶が並ぶ。手前の木桶は数年前に組み直したものだが、今では竹を編む職人が少なくなり、最近ではステンレスでつないでしばっている。   蔵や桶には「クセ」があり、それを把握した上でもろみを仕込む。蔵で造る醤油は、タンク発酵よりもかなり高級品。初夏から真夏にかけて蔵のあちこちからもろみが弾ける音が聞こえる。
 

未来に残したい本当に“うまい醤油”

 
島醸には「天然醸造木桶蔵」もあり、そこには天然杉の木桶が鎮座していた。蔵では材料に丸大豆と小麦を使用し、蔵に住む菌や自然そのままの温度で発酵、熟成をさせる。「元は酒屋で使われ、150年以上経った木桶もあります。痛んだ桶は分解して組み直し、大事に使い続けています」。2mを超える大きな木桶が何本も続く光景はまるで迷路みたいだ。
  「木桶は全部で約200本。6月から7月にかけてほぼ毎日、中のもろみをかきまぜて発酵を促す作業が必要。暑い蔵での作業は重労働!」と眉間にシワを寄せる山本さん。「でも、この蔵で造る醤油はホントにうまい。今や水より安い醤油がある時代。だからこそ、本当にうまい醤油を造らなければと思うんです」。同じ食に関わる者として、その真摯な思いに共感せずにはいられなかった。
     
島醸は醤油造りの昔と今を知ることができる場所。事前に申し込めば工場見学することもできる。
 
山本さんは日本醤油協会認定の「しょうゆもの知り博士」。小豆島には5人しかいない。「今後は、醤油造りを通して食育活動にも取り組んでいきたいと思っています」。